ニコラス・ハイトナー演出
『ブック・オブ・ダスト ~美しき野生~』

10/14(金)〜シネ・リーブル池袋にて上映

『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』(ライラの冒険)三部作の12年前の物語がついに舞台に!

 

 ナショナル・シアターで舞台『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』を演出したニコラ ス・ハイトナーが18年ぶりにフィリップ・プルマンの原作小説を舞台化した。 BBCとHBOが共同製作した人気ドラマ『ダーク・マテリアルズ/黄金の羅針盤』の時代から遡ること12年前。洪水が渦巻くフィリッ プ・プルマンの不思議な世界を舞台に、マルコムとアリス、そして彼らのダイモンがライラという赤ちゃんの身を守るために、カヌー”美しき野生”号で彼女を連れて旅に出た。マルコムとアリスは、ライラを狙う組織から逃げながらライラに隠された真実を見つけることができるのか?

作:フィリップ・プルマン

脚色:ブライオニー・レイヴリー

演出:ニコラス・ハイトナー

デザイナー:ボブ・クロウリー(ローレンス・オリヴィエ賞受賞デザイナー)

照明:ジョン・クラーク(「リーマン・トリロジー」など)

音響:ポール・アルディッティ(「夏の夜の夢」「ジュリアス・シーザー」など)

作曲:グラント・オルディング(トニー賞ノミネート作曲家)

出演:サミュエル・クリーシー、エラ・デイカーズ、ナオミ・フレデリックほか

ストーリー:

11歳のマルコム・ポルステッドと彼のダイモンのアスタは、オックスフォードから3マイル離れた 場所に住んでいる。マルコムは15歳のアリスと彼女のダイモンのベンと共に、両親が経営する宿屋「トラウト」で働いている。トラウトは聖ローザマンド修道院に近く、マルコムは修道女たちの日常のお手伝いもしている。ある日、聖ローザマンド修道院を訪れたマルコムとアリスは、シスターたちが秘密裏に育てている赤ちゃんに遭遇する。実は、その赤ちゃん“ライラ”はアスリエル卿とマリサ・コールターという2 人の賢者の赤ん坊だったのだ。街中を歴史的な洪水が襲い、マルコムとアリスはライラを連れてカヌー “美しき野生”号で脱出を図るが、3人をライラの母親マリサと、過激な巨大組織マジステリアム(教権機関)に所属するジェラール・ボンヌビルが追っていた。 危険を孕むマルコムたちの旅は無事に終わるのか?ライラが追われる理由は何なのか?手に汗握る壮大な冒険物語の結末は?

『ブック・オブ・ダスト〜美しき野生〜』本編についてコメント到着!
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村山由佳様_BODコメント.jpg

「本当に記憶に残る舞台というのは、関わる全ての部署がそれぞれの分野で最高に素晴らしい仕事をしたときに生まれる。どれか1つ欠けてもダメだ」

そんなことを思い出させる作品である。

 

この作品の視覚的な主役は舞台全編に渡って投影される、木版画の様なセンスの良い映像に違いないが「シンプルだが遠近感や透明感を残す、転換効果も高いセットデザイン」「主役の2人には少し色を入れているが、モノクロを基調とする衣裳デザイン」「床下や衣裳から立ち上る煙の効果」は映像投影と相まって観客を壮大な旅へと誘うことに成功している。

そして、映像を最大限綺麗に見せるために潔いほどその場面で必要なエリアしか明るくならない、開幕から終演まで暗さをキープした絶妙な照明デザイン。時には出演者の表情すらよく見えない。それゆえに、顔が行灯となっていて輝きを放つパペットたちが、この作品の中で雄弁に物語を語り、際立っていると言えよう。素材を多用しないでシンプルに白い紙をベースに作られた動物たちが、人間の俳優以上に生き生きと動き、感情を表に出し、笑いや緊張感を生み出している。照明が暗いからこそ、パペットを操作する俳優たちの存在がうまく消えて見える時と、そうでない時が絶妙なバランスになっていて、これも演出家の計算なのだとすると恐ろしい。

 

私は舞台美術を生業にしているので、つい視覚的効果のことばかり言及してしまうが、演出も俳優も文句なしに魅力的だ。クレジットに「演出家」がこれだけ多い作品も珍しいが、非常によく機能したに違いないと思わせる。シリアスな場面でも笑いが起こる英国演劇のユーモアセンスのある芝居は流石だし、素朴だけれど、総合芸術としての完成度がこれだけ高い作品に出逢えるのは幸せである。

(舞台美術家・松生紘子)