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『イヴの総て』プレミア上映トークショーのご報告

NTLive『イヴの総て』プレミア上映

戸田奈津子×佐藤友紀 スペシャルトーク

2019年11月8日(金)公開のナショナル・シアター・ライブ『イブの総て』のプレミア上映会が、10月29日(火)にTOHOシネマズ 日本橋で開催されました。その際の字幕翻訳家・戸田奈津子さんとフリージャーナリスト佐藤友紀さんのトークショーの模様をダイジェストでお届けします!




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新人女優が先輩を蹴落とす、バックステージものの定番

佐藤 皆さん、こんばんは。本日は映画字幕翻訳家の戸田奈津子さんをお迎えし、お話を伺いますが・・・さて、今日最初のミステリーは、なぜNTLiveのトークショーに戸田奈津子が出てくるのか?

戸田 それがね、私、お芝居を最近はよく観るんですよ。だってCGがないから。それに比べて最近の映画はCGだらけ。あまりに荒唐無稽なものが多いでしょう? ちょっと飽きてきているのね。そんな映画の“まやかし”と言ったら悪いけど、そういうものがないのが舞台の世界。すべて生(ナマ)。リアリティが違います。だからこのNTLiveやMETライブビューイングのような企画を追いかける時間が増えてきたんです。

佐藤 今日のお題は、今季NTLiveのフィナーレを飾る『イヴの総て』です。私は、本作の元となった映画を見る前から『イヴの総て』は知っていました。やはり、新人女優が先輩を蹴落とす、バックステージものとして。

戸田 そういう女優同士の駆け引きって、今ではバックステージもののメイン設定として必ず出てくる。

佐藤 ですよね?

戸田 一番の発端が『イヴの総て』で。あと『42ndストリート』とかいろいろありますけど、全部そのパターンですよ。新人が上の人を食っちゃうっていうね。

佐藤 ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の映画『イヴの総て』は1950年公開で、アカデミー賞を何個も獲っています。

戸田 日本では1年後くらいに公開されたのかな。すごく評判になりまして、私もリアルタイムで見ました。名女優マーゴ役のベティ・デイヴィスが非常に迫力のある、怖いオバサンでね(笑)。その凄さは、すごく印象に残っています。

佐藤 ベティ・デイヴィス演じる、あのマーゴ。何でも見透かしているようなオバサンなのに、それでも小娘に騙されるのかっていう(笑)。

戸田 それだけイヴっていう若い女がね、うまく取り入るんですもの。

佐藤 そうなんでしょうね。ところで私、お芝居を観に行くと、終わった後に必ず楽屋口に行くんですね。

戸田 あら、そうなの?

佐藤 ええ。で、楽屋口から出てきた役者さんに「素敵でした。サインください」って。私はそのレベルなんですけど、イヴちゃんはそこから取り入るわけじゃないですか。だから楽屋口に立つ人間として許せないって思う(笑)。

戸田 毎回やるの? その……“出待ち”っていうんですか。

佐藤 そう、出待ち。ほとんど毎回やります。私の仕事だと出待ち体験がとっても役立つこともあるんですよ。たまに半年後とか一年後にその役者さんにインタビューする機会が巡ってくると「あれキミ、どっかで会ってる?」とか言ってもらえるの。

戸田 覚えていてくれてる?

佐藤 だって謎の東洋人だから。

戸田 (笑)。


野望に燃えて一直線の女性、身近に結構いるかも


佐藤 今回大女優マーゴを演じているジリアン・アンダーソンは、皆さんご存じのように、TVドラマ「X-ファイル」で名を馳せ、NTLive『欲望という名の電車』でブランチ・デュボアを演じました。彼女のマーゴが、ベティ・デイヴィスとまた全然違っていて。

戸田 全然違いますね。どっちも面白い。やっぱりお芝居はね、プレゼンテーションごとにいろんなバラエティが観られるのがいいですよね。映画はそうはいかないじゃないですか。同じものを2本作るわけにはいかないから。

佐藤 で、マーゴの座を狙うイヴちゃんに、『シンデレラ』のリリー・ジェームズ。映画『シンデレラ』を監督したケネス・ブラナーに気に入られて、彼が演出した舞台『ロミオとジュリエット』にも抜擢されたんですよ。

戸田 きっと、ちゃんと基礎がある人なのよ。

佐藤 今回は演出を、今大注目のイヴォ・ヴァン・ホーヴェが手掛けていて。NTLiveでは彼の『橋からの眺め』も上映されたので、ご存じの方も多いかと……。

今ちょうど、東京芸術祭ワールドコンペティション2019の審査員長として来日しているジュリエット・ビノシュも過去にイヴォ・ヴァン・ホーヴェと仕事をしていて、「イヴォってすごくいろんなものを演出に取り込むのよ」と話していました。今回の『イヴの総て』では、映像をうまく取り込んでいましたね。

戸田 舞台で映像を使うっていうのは誰でも考えること。でも、今回のホーヴェのような使い方を、私は見たことがない。これからご覧になれば分かりますけども、お芝居の流れに乗るように、非常に効果的かつ意味があるように使っているんです。素晴らしいと思いましたね。

佐藤 今回私、この年になって観たせいか、嬉しいことに気付いたことがあって。マーゴが持っていてイヴちゃんが到底持っていないものっていうのが、ちゃんとクリアに描かれているんですよ。あまり詳しくは言わないようにするんだけれども(笑)、「策略を駆使し、なんでもかんでも自分が求めたものをグラブできる(手に入れられる)と思ったら大間違いだよ、お嬢ちゃん」と言いたくなるような、すごくいいシーンがありますよね。映画だったらパンしなきゃいけないような……。

戸田 そう、あそこの演出がとっても面白いの。場面をカットするわけにはいかないから、一つの空間の中で、登場人物たちのいろいろな思惑が提示されるようになっていて。うまく描けている。でも、あのイヴみたいに野望に燃えて一直線の女性、結構いるんじゃない?

佐藤 いますよね。映画『ブラック・スワン』みたいな、バレエの世界とかにもね。

戸田 身近の、会社の中にだっていると思いますよ。

佐藤 面白いのは、イヴの胡散臭さに女は気付くのに、男たちが気付かないところ。

戸田 (笑)。そうね、みんな騙されていますな。仕様がない。やっぱりね、女性それぞれの中にイヴみたいなところがあるからじゃない? 実際行動にまでは移さないだけで。だから感じ取ることができる。私でもやっぱり気付くと思う。イヴみたいな人が身近にいたら。


NTLiveは通常の公演以上のものが観られるNTLiveは“ギフト”


佐藤 ところで戸田さん、これまでNTLiveで関心した作品、好きだって思った作品はなんですか?

戸田 気づくと公開が終わっているからね、観たいものをずいぶんと逃しておりましてね……(苦笑)。

佐藤 いいよ、いいよ、見たものの中で。

戸田 『オーディエンス』は面白かった。

佐藤 あれは面白かったぁ!

戸田 ヘレン・ミレンがほんとに素晴らしい演技をして。コメディだったし、すごく面白かったですね。

佐藤 私、一つだけ戸田さんに嫉妬することがあって。自分が四分の一くらいしか英語のセリフが理解できないところ、戸田さんは全部分かっているんだろうなと。

戸田 そんなことありませんよ! シェイクスピアみたいに非常に美しい英語を喋ってくれる方は、まあいいとして、いろんなアクセントの方がいますから、決して私だって全部は分かりませんよ。だから、このNTLiveとかね、もう夢みたいよ。ロンドンで当たっている話題の舞台が、本国で上映してから何カ月かで日本にやって来て、字幕まで付いて観られるわけでしょう? 今の若い方々は、我々ババアの奪われていた喜びを味わっていらっしゃる。ほんとに羨ましいと思います。

佐藤 戸田さん、テノール歌手のヨナス・カウフマンっていう人の追っかけなんですね。

戸田 NYまで切符買って観に行ったんですよ。そしたらあの人、ドタキャンの名人で。私が劇場行った日にもドタキャンして。代役が立っていました。

佐藤 でもこのNTLiveだと……。

戸田 絶対にドタキャンはありませんね!(笑)

佐藤 (笑)。私なんか、お金がない時は舞台から遠いほうの席を買いますでしょ? そうするとフォーメーションとかはちゃんと分かるんだけれども、アップは見ることができない。でも、NTLiveではアップが見られる。

戸田 さらに上映前や休憩時間に、素晴らしいプレゼントとばかりにキャストやスタッフのインタビューも流れる。通常の公演以上のものが観られるNTLiveは、私にとってものすごく楽しみなギフトです。

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